海洋学会 会員の皆様
10月28日のメールでご紹介したように、本年度の海洋学会 秋季大会期間中の評議員会において「2017年5月に日本地球惑星科学連合(JpGU)とアメリカ地球物理学連合(AGU)との合同大会が開催されるのを契機に、本学会の春季大会を JpGU 大会において恒常的に開催することを検討すべきである」との提案をさせていただきました。その背景については、先日のメールをご覧いただければと思いますが、要約すれば「日本の学術研究コミュニティーにおける海洋学のプレゼンスを高めていくことが今後不可欠であり、そのためには、JpGU に合流して研究発表を行うことが効果的かつ現実的な選択である」という考えに基づいています。秋季評議員会においては、この提案に関する活発な議論をしていただき、最終的に「2017年度春季大会は学会単独では開催せず、JpGU と AGU との合同大会に参加する形で開催する」ことを承認いただくとともに、「2018年度以降の春季大会のあり方については、今後も検討を継続していく」こととなりました。
本メッセージでは、この評議員会における議論の概略について報告させていただくとともに、改めて、会員の皆様のご意見、ご議論をお願いしたいと思います。下記に、評議員会でいただいた主なご意見と、その各々に対する学会執行部の見解をまとめました。
(1) 海洋学会大会での研究発表の内容には、JpGU 大会での発表にフィットしにくいものがある。例えば、生物系の研究発表だけでなく、地域的な事象や記載的な調査結果なども、JpGU 大会での発表は困難であると会員側から判断されてしまうケースがあるのではないか。こうした研究の発表の機会が、秋季大会のみに限られるようになることで、研究発表数の減少、ひいては、学会員数の減少につながってしまうのではないか。
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8月17日付で発信したメッセージで述べたように、生物学・生命科学分野は、今や地球惑星科学の重要な構成要素となりつつある。実際、AGU や 欧州地球科学連合(EGU)、アジアオセアニア地球科学学会 (AOGS) においても生物海洋学系の研究発表が多数行われており、生物系の会員の方々にはむしろ JpGU 大会で積極的に発表していただきたいと思う。地域的・記載的な海洋研究についても同様で、現在の JpGU 大会の研究発表内容に「あわせる」のではなく、海洋学会で発表されるような研究の全てが JpGU の重要な一部となっていくように、海洋学会が JpGU に「乗り込んでいく」ことを目指すべきと考える。その上で、秋季大会だけではなく春季にも何らかの学会行事を行うこと等で、会員数の減少を防ぐ方策を検討していきたい。
(2) 春季大会が JpGU 大会で開催される場合に、総会や受賞記念講演はどうなるのか。会則の改定をすることになるのか。特に、事業年度・会計年度を変えるならば、移行過程を含めたロードマップはできているのか。
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すでに学会幹事会ではいくつかのシミュレーションを行っている。秋季大会時に総会を開くことにして、事業年度・会計年度を秋開始という形に改めることもその1つであるが、その場合には、会則の改定および過渡的な事業年度・会計年度の設定が必要であり、複数のロードマップ案を検討している。一方、JpGU 大会期間中や春季の適当な時期に首都圏で総会を開催することにすれば、会則の改定等は必要なくなる。
(3) 大会には、シンポジウム、ナイトセッションなど、研究発表以外の行事があり、こうした大会の機能のすべてを秋季大会に集約することは困難ではないか。あるいは秋季大会への集約が学会活動の低下につながってしまうのではないか。
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日本海洋学会のホーム大会として秋季大会を拡充していくことは必要不可欠である。一方、JpGU 大会での研究発表以外、春季の学会行事を一切取りやめるかどうかについては、今後検討の余地がある。例えば、総会、受賞記念講演、シンポジウム等の一部を春季に開催する案もあり得る。
(4) JpGU 大会で研究発表を行うためには、JpGU の大会参加費と個人会費を別途支払うことになる。会員にとっての負担増は間違いない。学会費の値下げ等の対応は取れないか。
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JpGU 大会に合流して研究発表を行う場合、負担増となってしまうことについてはその通りで、心苦しい部分があるが、その一方で「海洋学にとどまらず、周辺領域まで含めた研究交流ができるようになる」というメリットもある。会費の値下げについては、今後の学会の財政事情に依存する。長年の懸案として残されてきた法人化への対応が迫られるケースも予想され、その場合には、学会財産の留保が必要となる点など、今しばらくは状況を見る必要がある。
皆様には、上記以外にも、様々な論点の提起やコメント等をお願いできればと思います。学会メーリングリストへの投稿でも、日比谷宛の私信 (hibiya@eps.s.u-tokyo.ac.jp) でも結構です。皆様の活発なご議論をお願い申し上げます。