日本海洋学会の皆様
日本海洋学会の運営にあたっては、日頃より、会員の皆様のご協力、ご尽力を頂きまして誠にありがとうございます。さて、本年8月17日に私の方から学会メーリングリストを通して会員の皆様に下記のメッセージをお送りいたしました。このメッセージでは、日本海洋学会と日本地球惑星科学連合 (JpGU) との関係強化の必要性を述べ、そのためにも海洋学会春季大会をJpGU大会に合流する形で開催することを検討すべきとの提案をさせて頂きました。
先日の秋季大会期間中に開催された学会の評議員会においても活発な議論をさせて頂き、その結果、2017年度春季大会は学会単独としては開催せず、JpGUとアメリカ地球物理学連合 (AGU) の合同大会に合流する形で開催する方針をお認め頂きました。また、2018年度以降の春季大会のあり方については、JpGU-AGU合同大会への合流の経験を経て、今後も検討を継続していくことになりました。
日本海洋学会の長い伝統と実績に関しては繰り返すまでもありません。しかし、近年の我が国の学術研究全体が拡充していく方向にあるとはいえない状況下で、日本海洋学会の会員数や大会での発表数に代表されるアクティビティも低下に転じつつある傾向は否めません。その一方で、海洋立国という言葉が様々な局面で語られ、海洋の研究については社会からの期待が大きいことも事実です。我が国における海洋研究は依然として「伸びしろ」を有しているはずで、研究の質も研究者の数も、もっともっと伸びていくべきものであると確信しております。我が国の海洋研究とそれを担っている日本海洋学会が一層の発展を遂げていくために達成しなければならないことは多岐にわたりますが、まずは、国際的に高く評価される研究やプロジェクトを進めていくことが最も大切であり、そのための環境づくりには日本の学術研究コミュニティにおける海洋学のプレゼンスを高めていくことが不可欠と考えます。
会員の皆様におかれましては、この機会に是非、我が国の海洋研究を取り巻く状況に思いを馳せて頂き、その上で、今後の学会のあり方をともに考えて頂ければと思います。今一度、下記のメッセージにお目通し頂き、積極的な議論を頂ければありがたく存じます。
2015年8月17日付 会長メッセージ
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日本海洋学会 会員の皆様
日本海洋学会は、1941年に創立されて以来、数多くの学術的成果をあげ、学会における研鑽を通して、優秀な人材を世に送り出してきました。この間、これらの研究活動の根幹となる研究発表大会は、春季に関東地区の会員、秋季に関東地区以外の会員により、交互に運営を担当する形で行われてきました。
しかしながら、シンポジウムの開催件数が増える一方で研究発表の件数が減っていること、研究分野の細分化が進み、プログラム作成が大会実行委員会の手に余る場合もあることなどを考慮し、先日の学会長/大会実行委員長の連名で発信したメールでお知らせしたように、会員により提案されたセッションに発表希望者が要旨を投稿する、いわゆるセッション提案制を2016年の春季大会において試験的に導入することにしました。期待通りの効果があれば、2016年度の秋季大会以降も、この制度を継続していく提案をしたいと思っています。
これに加えて、本メールでは、研究発表に関するもう一つの懸案事項について、新しい提案をさせて頂きたいと思います。それは、私が会長に就任して以来、何度か述べてきた日本地球惑星科学連合 (Japan Geoscience Union: 以下 JpGU) 大会との関係にかかわることです。
JpGUは、日本学術会議の改革に対応して地球惑星科学関連学協会を束ねる窓口組織として2005年に発足し、我が国の地球惑星科学界を主導する役割を果たしてきました。次期の海洋学に関連する大型研究計画 (大型研究マスタープラン2017) も JpGU が主体となって提案することになっており、海洋学の将来構想においても重要な役割を担っています。JpGUは国際化にも力を入れており、2016年度にはアメリカ地球物理学連合 (American Geophysical Union: 以下 AGU) との共同シンポジウムを企画し、さらに 2017年度には AGUとの合同大会を行うことになっています。現在、JpGUには日本海洋学会を含めて50の学協会が所属していますが、その多くは春季の研究発表の機会をJpGU大会 (毎年 5月に開催) に設け、学術的交流を深めるとともに、地球惑星科学界の将来構想の議論に積極的に参加しています。
近年、海洋学を取り巻く環境は大きく変わりつつあります。大型の研究予算獲得のためには、より学際的な視点や目標をもつ必要があり、学協会の枠を超えた大きな科学ムーブメントの形成が求められています。また、国際的な場での学術的議論や各国の研究者との協力関係構築は、日々の研究を進める上でますます重要になってきています。私は、秋季大会を従来通り開催する一方で、春季大会をJpGU大会に合流する形で開催することにより、日本海洋学会の独自性を保ちながら、海洋学会会員の研究を広く発信し、国際化を推進して、海洋学会をより一層発展させる大きなメリットが得られると考えています。その提案をさせて頂きたいというのが、本メールの主旨です。
春季大会をJpGU大会と合流させるにあたり、特に生物学や生態学に関連する研究を行っている会員の皆様の中には、ご自身の研究分野が地球惑星科学という学術分野とはあまり関係がないとお考えの方がいらっしゃるかもしれません。生物学的なアプローチによる研究に関して、海洋学会の中での発表の機会が減るのではないか、海洋学会における生物系の研究分野がないがしろにされるのではないかという危惧を抱かれる方もいらっしゃるかと思います。しかしながら、近年の地球惑星科学においては、生物を含めた学際研究の重要性は非常に高まっており、生態学や生物地球化学などはもちろん、広く生物学的な手法を用いた研究もコミュニティの重要な構成要素として理解されてきています。JpGU大会において生物学的アプローチの重要性を広く発信することは、新たな研究の機会の獲得や、他の学協会員の海洋学会への参加にも繋がると考えています。是非、JpGU大会および秋季大会での積極的な生物系のセッション提案を通じて、より広く研究を発信して頂くとともに、海洋研究における生物系研究のウェイトを高めていって頂きたいと思います。会員の皆様からの不安や疑問に関しては、今後広くご意見を伺っていくことにより、懸念が払拭されるよう努めるとともに、よりよい学会大会のあり方について引き続き検討していきます。
春季大会がJpGU大会に合流する場合、日本海洋学会の総会や受賞記念講演などを、多くの学会が参加するJpGU大会と並行して行うのは困難ですので、これらは、すべて秋季大会に移行することを提案いたします。秋季大会は、日本海洋学会の長い伝統を引き継ぎながら、多くの会員が一同に会するホームあるいは「ふるさと」の大会として、プレナリーセッションなど、日本海洋学会独自の企画の充実により盛り上げていきたいと考えます。実務的には、総会で各年度の事業計画・報告や予算・決算を審議する必要があることから、学会の事業年度も、現行の「4月~翌年 3月」から「10月~翌年 9月」に移行することを、同時に提案いたします。
これまで関東地区以外で行ってきた秋季大会に、関東地区主催の大会をどれだけの頻度で入れていくかは意見のわかれるところですが、所属会員数を鑑みれば 2年から 3年に一度、関東地区で開催するのが常識的な線かもしれません。
以上の提案をもとに、愛媛大学での2015年度秋季大会期間中の評議委員会などで、さらに議論を深めた上で、会員の皆様のご賛同が得られれば、2017年度春季の JpGU-AGU合同大会に合流する形で新しい大会開催方式を導入していければと考えています。学会員の皆様によるご意見、ご検討をよろしくお願いいたします。
日本海洋学会会長 日比谷 紀之
(東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻)