日本海洋学会 会員の皆様

前略

 日本海洋学会では毎年、春季と秋季の2回の大会を通じて、会員の研究に関する議論を行うとともに会員間の交流の活性化を図っています。しかし最近の大会では、研究発表の前後日程に設けられるシンポジウムの開催件数が増え、その一方で、研究発表の件数が減っています。学会幹事会としてもこの点を検討課題としてとらえ、大会運営検討ワーキンググループを設けて議論することで、近年のこの傾向は、従来の研究発表と比べ、シンポジウムではプログラムをより自由に編成することが可能であること、さらに、興味を同じくする人たちの間でより濃厚な議論ができることに起因していると推察しました。しかしながら、大会の本体ともいうべき研究発表に対し、シンポジウムは、いわば、サイドイベントであり、そのウェイトばかりが高まっていくことは、大会が本来あるべき姿とはいえません。より魅力的な大会の実現に向けて、シンポジウムの利点を研究発表に取り入れることが可能な「テーマ設定型」のセッション制を導入する必要があるものと考えます。その最大の目的は、単にシンポジウムと研究発表との配分調整のみならず、国際学会のように、セッション提案を通じて研究を活性化し、さらに、その新たな方向性を生み出していくスタンスを海洋学会の中に醸成していくことにあります。このことについては、先の総会 (2015年3月) でご案内の通りです。

 そこで、2016年度春季大会 (2016年 3月14日 (月) 〜 3月18日 (金)、東京大学 本郷キャンパス) の大会実行委員会では、上記の議論を考慮して、この「テーマ設定型」のセッション制を導入することにしました。従来の大会では、発表タイトルの募集を行った上で、大会実行委員会がテーマごとに取りまとめてプログラムの編成を行ってきました。これに対して本大会では、まず会員に、大会のセッションとして取り上げたいテーマを、そのセッションの方向性/研究の切り口を明確にした上で、9月4日 (金) から 10月16日 (金) までに提案していただきます。その後、大会実行委員会は、各セッションを提案した会員に、その採否を10月末頃までに通知するとともに、研究発表の募集を11月上旬から12月18日 (金) まで行います。 なお、提案されたセッションにあてはまらない研究発表については General セッションを設けて募集することとし、プログラム編成時にそれらをサブテーマごとにとりまとめていく予定です。詳細については、後日 (9月4日)、大会実行委員会からご案内する予定です。

 セッションの中に非会員の発表も含む招待講演を組み込むことで、学会が目標としてきた他学会との交流や連携に繋がります。また、海外からの招待講演を広げていけば、学会の国際化という、もう一つの目標達成への序章にもなります。特に、若手会員にとっては、研究発表を海外の研究者に聞いてもらうことで刺激を受け、人脈をつくる機会にもなります。さらに若手会員の招待講演も可能とすることで、学会として会員のキャリアアップにわずかながらでも貢献できればと考えています。

 また、この2016年度春季大会でのセッション制導入を受けて、学会幹事会では、研究のアウトリーチをはじめとするシンポジウムの役割をより明確にするため、以下に挙げる採択要件のもとに、提案されたシンポジウムの審議を慎重に進めていく予定です。

(1) 海洋学会と他の学会との連携強化に貢献するもの。
(2) シンポジウムの具体的なアウトプット (例: 同じ海域を複数船舶で連携する航海計画の提案書の立案、大型研究計画の策定) の議論のため、その場での総合討論が必要不可欠と認められるもの。
(3) 海洋学に関連する啓発・提言活動など、市民やポリシーメーカーなど非会員の参加が多数見込まれるもの。

 これらの趣旨に合わないシンポジウムの提案、特に、従来の大会で実施されてきたような研究成果発表型のシンポジウムは、セッションへの移行をお願いすることがあり得ることをご承知おき頂ければ幸いです。

 なお、セッションの募集にあたっては若手会員からの提案を積極的に推奨・支援します。そのほか、より魅力的な大会の開催に向け、学会幹事会は各大会実行委員会と協力しながら努力してまいりますので、会員の皆様におかれましても、是非、積極的なご提案、ご協力をお願い申し上げます。

草々

 日本海洋学会 会長 日比谷 紀之

 2016年度 日本海洋学会 春季大会実行委員長 古谷 研