種々の疑問に関する専門家の意見やこれまでの知見

(2011年8月23日までを追加)

ここに載せた質疑応答に対するコメントやご意見は

池田元美会員(mikeda(at mark)ees.hokudai.ac.jp)までお寄せください。

同会員が責任をもって回答者に連絡し、返事します。

また有用な場合はそのやりとりをここに追加することもあります。

注記:たとえばセシウム137を,137-CsやCs-137と表記することもあります.本文では,回答者によって表記が異なっていましたので,統一して「セシウム137」と表記しました.

1.セシウムの海底への沈降などについて
2.生物への影響について
3.土壌と河川を通じた放射性核種の海洋流入について
4.海底堆積物への蓄積
5.海産物への影響
6.放射性元素の測定法


1.セシウムの海底への沈降などについて

< 質 問: 池田会員 >

新聞によると海底土壌からセシウム137などが検出されており,おおよそ1000 Bq/kgくらいのようです。もし,この土壌が10cm x 10cm四方で5cmの深さから採ったとすると,おおよそ10**5 Bq/m**2くらいになります。これは陸域の100分の1です。もしこれが大気から降下してきて海底にたまったとすると,ずいぶん少ない(海洋中の沈降が遅い,あるいは大気からあまり降下しなかった)のですが,もし建屋トレンチ(注:建屋外に掘られた溝のこと)から海洋に漏れ出た分だとすると,その総量は大気放出の10分の1くらいなので,海洋中の沈降は速いことになります。この概算は妥当ですか。それとも何か間違っていますか。もちろん海洋のどこで測ったかが重要なのですが,その情報を得られませんでした。

< 回 答: 日下部会員 >(5月10日)

1000 Bq/kgの堆積物が1kgあるとします。通常含水率は50%程度(重量比),堆積物の乾燥比重は2.5ぐらい。Wetの堆積物に直すと,2 kg(海水1 kg,堆積物1 kg),体積は(1000 +1000/2.5)cm**3 = 1400 cm**3,5 cmの深さまで試料を取ったとすると,面積は1400/5 = 280 cm**2,1平方メーターに換算すると1000/280*10000 = 3.6x10**4 Bq/m**2 と,池田さんの値よりさらに小さくなりました。どちらにしろ,土壌と比べると桁違いに少ないですね。

基本的にセシウムはナトリウムやカリウムと同属のアルカリ金属ですから,海水中では比較的溶けやすく粒子との親和性(注:くっつきやすさ)はあまり強くはありません。外洋(注:沖合の海のこと)では,ほぼ溶存(注:溶けている状態)としても挙動してとしても間違いではないと思います。ただ,セシウムは結構粘土鉱物に吸着することもわかっております。沿岸では相当土壌成分が入っておりますから,かなりの量が堆積している可能性も十分あります。さらに,津波の引き潮で膨大な量の土壌がもたらされていますから,相当量が堆積しているはずです。さて,実際にどれだけ堆積しているかは,まさに測定してみるしかないですね。私自身は海水の汚染よりも堆積物の汚染の方が環境へのインパクトは大きいような気がします。海水はいつかは希釈されますが,海底堆積物中のものは希釈されず,底棲動物(注:海底付近に生息する動物のこと)への影響は長く続きます。

文科省の委託で海生研が観測を始めました。堆積物試料の採取も計画されております。汚染の広がりの一端が明らかになると思います。詳細は以下をご覧ください。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110506-OYT1T00760.htm

なお,手前味噌ですが,海洋における人工放射性核種の挙動に関しては,私が関係したWS等の記録として「放射線科学」と言う雑誌にまとめられています。以下のweb siteをご覧ください。

http://www.nirs.go.jp/publication/rs-sci/index.shtml

2009年第3号,2008年第6号です。前者の方がより最新のデータが載っております。

< 追加質問: 池田会員 >

セシウムは徐々に沈降することはないのですね。なるほど。海水中粒子との親和性があるというのも初めて知りました。

堆積物に付着するメカニズムとして,植物プランクトンが多いところで,その沈降粒子に付着して堆積物に取り込まれること,そして風成循環のうち北風によって海面から陸棚海底のエクマン層(注:海面の風による流れや,海底付近の海底摩擦の影響下にある流れで,地球の回転の効果が効いている流れ層のこと)に輸送されることが効くように思いますが,いかがでしょうか。

< 回 答: 日下部会員 >(5月10日)

平衡を仮定してある固相にどれだけセシウムが吸着するかという値は一応IAEA(注:世界原子力機関)から出ております。しかし,福島沖はとても平衡にあるとはいえません。時間の次元をもつ反応係数のようなものが必要ですが,果たして信頼に足るものがあるかどうか?反応係数は懸濁物質量の関数でもあります。

親和力というのは適切な言葉ではないかもしれません。分配係数(Kd)というものがあって,沿岸域ではセシウムは10**3のオーダー(注:オーダーは大きさの意味)です。海水と平衡にある堆積物の濃度は海水の数千倍ということです。現実的にはこれほど高濃度にはなっていないでしょう。

植物プランクトンへの取り込みは濃縮係数(CF)であらわされます。セシウムは20となっています。海水中の濃度とプランクトンの濃度の比です。あまり大きな値ではありません。セシウムの収支を考える場合には,植物プランクトンはあまり重要ではないかもしれません。ただ,食物連鎖(注:小型の生物がより大型の生物に食べられ,その生物がさらに大型の生物に食べられるという連なりのこと)のスタートとして,生態学的及び食の安心安全ということに関しては大変重要で,ここから徐々に濃縮が始まり,大型魚に達します。先日の会合で紹介いたしましたように,このプロセスは,数年のオーダーになります。今後,海水,生物,海底土を含む総合的な長期観測は必須と思います。

< さらに追加質問: 池田会員 >(7月10日)

ヨウ素、セシウム以外の核種はどうなのでしょうか。とるに足らないのか、測りにくいがあぶないものがあるのか、どちらでしょうか

< 回 答: 日下部会員 >

環境放射線モニタリング指針(原子力安全委員会)によりますと、「平常運転時事故時の公衆の線量評価の対象核種」は液体に関しては以下のようになります。

放射性ヨウ素、トリチウム、炭素14、コバルト60、カリウム85、その他放射性希ガス、ストロンチウム89、ストロンチウム90、セシウム134、セシウム137

これだけ測定しておけば、まず大丈夫ということです。ところがこの指針には、事故時の液体中の線量評価対象核種が載ってない(!?)。

原子炉内には以下の3種類の放射性核種が含まれています。

(1)燃料:ウラン235、またはプルトニウム239。MOX燃料(注:原子炉の使用済み核燃料中に1%程度含まれるプルトニウムを再処理により取り出した燃料)は両方含みます。福島第1の3号炉はMOX燃料使用。

(2)核分裂生成物:基本的にはウラン235が分裂した場合、分裂生成物の生成効率は質量数大体95と140にピークを持ちます。90あたりの核種で一番有名なのはストロンチウム90ですし、140あたりではセシウム137、ヨウ素131があります。実際にはその他に種々雑多な核種があります。

(3)超ウラン元素:炉内の核反応で生成。ウラン235より重い元素。プルトニウムやアメリシウムが有名。

福島では、今のところ大部分沸点が低い元素、すなわちヨウ素とセシウムが大気を通して出てきてます。その他、希ガスのキセノンも出ています。アメリカ西海岸で福島起源のキセノンを検出したというのが、既に論文になってます(なんと言う速さ!!)半減期は短いですから、環境への影響はほとんどないでしょう。プルトニウムやストロンチウムが土壌で見つかってますが、大した量ではない(ような気がする)。どのように出てきたかは興味あるところです。

これから、事故が収束に向かうのであれば、大気経由での放射性核種の放出はないと思います。しかし、燃料棒に触れた水が汚染水として海に出てきますと、いろいろ種々雑多な核種が出てくるでしょう(もう出てる??)。分析精度を上げると、いろいろ見つかり、科学的にはいろいろ面白いことになるでしょうが、放射能的にはやはりセシウム134、セシウム137、ストロンチウム90などが、一番多いと思います(このあたりは定量的には少々不確か)。その他、プルトニウム、アメリシウム、ウランは量的には結構な量がありますが、半減期は長く、放射能的には問題にならないかも知れません(流出量による)が、アルファ線をだし、体内にはいると厄介です。

私は今後はセシウムに加え、我々の環境の安心安全を担保するうえで、少なくともストロンチウム89や90と、プルトニウム239や240を海水のみならず堆積物等について測定していくべきと考えてます。ストロンチウムもプルトニウムもその測定は容易ではありませんが、やる価値はあるでしょう。

あまり定量的な記述ではありませんが、取り急ぎまとめてみました。

< 質 問: 池田会員 >

放射性物質の放出はどのくらいの量ですか。

< 回 答: 才野会員>(6月3日)

37~63万テラベクレル(注:テラベクレルはTBpと表記.テラは10の12乗)と言うのは,いわゆるヨウ素換算の値です。内訳は下の表のとおりです。ペタベクレル(注:PBqと表記.ぺタは10の15乗)で表示しています。

ヨウ素131 セシウム137
チェルノブイリ総放出    1800 PBq 850 PBq
福島大気放出       130~150 PBq 6~12 PBq
福島海洋放出 2.8 PBp 0.94 PBq
2号機地下たまり水     330 PBq 750 PBq
(以上は,才野が4月25日時点での情報を集めてまとめたもの)

ただしこのヨウ素換算と言うのは,海水へ出たものに関しては当てはまらないので注意が必要です。

詳しくはこちらをご覧ください。

セシウム137のヨウ素131換算係数40倍の根拠が下記のAppendix I(p.154)にあります.

http://www-pub.iaea.org/MTCD/publications/PDF/INES-2009_web.pdf

これによると,40倍というのは大気放出されたセシウム137が地上に降下して,それを成人が50年間にわたって外部被ばくを受ける場合のヨウ素131等価線量(注:ヨウ素に換算した時の値という意味)のようです.海水中への放出に関しては換算係数が見当たりません.

2.生物への影響について

< 質 問: 池田会員 >

生物への吸着,生物による濃縮はどの程度でしょうか。特に食物連鎖で高濃度になることはないでしょうか。

< 回 答: 田辺会員 >(4月29日)

有害物質の生物蓄積性を議論する場合,放出量,半減期,生物濃縮性の情報が必要です。今回の原発災害の場合,放出量の多いセシウム13)とヨウ素131が最も懸念されますが,ヨウ素131 は半減期が短いので長期的・慢性的な生物汚染と影響は小さいと考えられます。一方,セシウム137は半減期が長く生物濃縮性もありますので,環境中に長期間残留し食物連鎖を通して多様な海洋生物に蓄積することが予想されます。水-魚介類間の生物濃縮係数は数百倍で,上位生物の濃縮係数は千倍以下とみられており,PCBs(注:ピーシービー)等と比べるとセシウム137の生物濃縮係数は2~3桁ほど低いのですが,放出量が多いので海域によっては海水中の濃度が上昇し,千倍程度の濃縮でも生体リスクの閾値に達するかもしれません。海水および多様な生物種(プランクトンから海鳥・海棲哺乳動物まで)について長期モニタリングを実施し,汚染の実態と動向を理解する必要があります。

20世紀後半における海棲哺乳動物のセシウム汚染についてまとめた当方の論文を添付しておきます。Fig. 1 (注:省略しています)をみれば分かるように,東北沖は世界でも有数の清浄海域でした。今回の原発災害で,この海域の生物汚染がどのように変化するのか興味が持たれるところです。また,この図から,北海やロシア陸封湖における海棲哺乳動物のセシウム汚染レベルの高いことが分かります。20世紀後半において,この地域の核の管理が不十分であったこと,事故が多発したこと等が原因と考えられますが,長期にわたり汚染源から環境へセシウム137 が流出したことも一因と考えられ,今回の福島原発災害では早急に流出を止める対策が必要と考えられます。

今回の地震発生の1週間前に,茨城沿岸にカズハゴンドウ(イルカ)が大量に座礁し死亡しました。そのうちの9頭を愛媛大学に運び,生物環境試料バンクにホールボディ(注:体全体のこと)で冷凍保存しています。5月中旬に解剖する予定です。イルカ等鯨類の漂着はわが国沿岸で頻発しているので,今後東北沖の検体も入手できるものと考えられ,カズハゴンドウと比較することで今回の震災による化学汚染の影響が解明できるかもしれません。なお,カズハゴンドウについては,モナコのIAEA(注:世界原子力機関)から試料提供の依頼がありました。筋肉,肝臓,骨等の試料を提供する予定です。

< 質 問: 池田会員>

生物濃縮の定義はどのようにされているのでしょうか。

< 回 答: 鈴村会員>(6月6日)

海洋環境中での生物による有害物質の濃縮ついては、そのプロセスによって、いくつかの定義があります。下記のUSGS(米国地質調査所)のホームページによると、

http://toxics.usgs.gov/definitions/bioconcentration.html

Bioconcentration – The accumulation of a chemical in the tissues of anorganism as a result of direct exposure to the surrounding medium(e.g., water; i.e., it does not include food web transfer).:食物連鎖は通らない、海水から直接の取り込み。

Bioaccumulation – General term describing a process by whichchemicals are taken up by an organism either directly from exposure toa contaminated medium or by consumption of food containing thechemical.:海水から直接と食物連鎖の両方。

Biomagnification – Biomagnification is the process whereby the tissueconcentrations of a contaminant increase as it passes up the foodchain through two or more trophic levels.: 食物連鎖のみ。

Bioaccumulationに対して生体内蓄積という日本語があてはめられることがあります。しかし、いずれも「生物濃縮」として表記されることがあり、それぞれのプロセスをきちんと区別して議論しないと混乱が生じるかもしれません。

3.土壌と河川を通じた放射性核種の海洋流入について

< 質 問: 池田会員 >

河川については本当の専門家だと認識しております。セシウムはかなり強い雨でないと川に流れ込みませんか。その後,どのように海まで行くでしょうか。

< 回 答: 長尾会員 >(4月28日)

我々は昨年度から,学生の研究テーマとして,福井県の九頭竜川での粒子の流出挙動を調べるために,セシウム137, ベリリウム7, 鉛210の放射性核種を組み合わせた検討を進めています。雨が降らない時期でも,河川水中の懸濁粒子にセシウム137は検出されますが,それは,こちらの低バックグランド検出システムを使っていることが大きいです。通常のGe(注:ゲルマニウム)検出器では,感度とバックグランド(注:汚染によらず常に存在している放射線のこと.バックグランドは「背景」という意味.)の問題で検出できませんでした。しかし,弱い降雨時には,懸濁粒子量が増え,セシウム137の河川水1リットルあたりの放射能濃度も当然増えています。つまり,降雨時には,河川流域から河川へ輸送されるセシウム137の量も増えると考えることが出来ます。

そのため,福島でも降雨時には粒子として運ばれるセシウ137は増加すると予想されます。ただし,茨城県久慈川の結果では,溶存態としてのセシウム137も総濃度の~50%程度ありますので,溶存態として動くことも十分考えられます。底泥に関しては,貝類等の底生生物への取り込みを評価することが重要だと思います。

流域からは河川を経由して海洋へ流れます。粒子態のセシウム137は河口域(注:河口付近のこと)である程度沈降した後に,粒径の小さいな粒子がより遠方へ運ばれ,堆積物に沈降していきます。そのため,ある程度沖合までの表層堆積物の採取・測定が必要です。一方,溶存態のセシウム137は,一部は河口域での凝集沈殿に取り込まれますが,沿岸域に到達したセシウム137はそのまま,溶存態として安定に存在することが予想されます。この場合,池田先生が行う水塊流動のモデルにより,予想することは可能だと思います。生態系への影響は,海水中のセシウム137の放射能濃度を測定し,生物への濃縮係数から生物内への取り込みを計算することは可能です。この点は,日下部会員が詳しいと思います。

< 追加質問: 池田会員 >

建屋の地下にたまっている汚染水が海に流れているだろうと推測していますが,その流量は土壌に依りますよね。あのあたりの土壌はどんなでしょうか。

< 回 答: 長尾会員 >

土壌の分類上では,灰色低地土と呼ばれる範疇に属すると思います。ただし,粘土鉱物の種類は場所により多少異なるので,確認が必要です。この辺の地質は,一番確実なデータは,福島原発建設時に調べたボーリングのコア試料のデータがあれば状況を把握することが可能です。東電は所有していると思います。

< 追加質問: 池田会員 >

一度,新聞に,粘土層なので,10 mくらい下の地下水にはセシウムが流れこまないと書いてありました。もちろんある専門家に話を聞いたものです。しかし,土壌の一般論として,一様に粘土層になっていますか。私は,絶対すきまがあると思います。そこから地下に,そして海洋に流れ出すでしょう。

< 回 答: 長尾会員 >

上でも書きましたが,その地域の地質次第です。ただし,地下のある深さで地下水が流れる帯水層があり,下部に粘土等の透水性の低い鉱物から構成される層が存在することは一般的な状況です。その意味で,解説者の答えは間違いではありません。もちろん,一部は土壌の中を下方浸透し,地下水を涵養していることは事実です。その意味では,地下水を経由して流れることは可能です。ただし,地下環境では,セシウム137は大部分土壌の粘土鉱物等に吸着し,地下水まで到達する量はかなり小さいと予想されます。ただし,原発内での事となると話は変わってきます。それは,ドライビングフォース(注:駆動力のこと)として,注入している水が漏洩していることがあげられます。つまり,イメージとしては,絶えず水が供給され,地下水へ押し出され,それが海洋へ移動する可能性は考えられます。極近傍の原発敷地内とそれ以遠の環境では,考慮するシナリオを別々に考えた方が良いと思います。いずれにしても,まずは,原発敷地内の地質状況の把握が,より正確なシナリオ設定に結びつくと思います。

< もうひとつ追加質問: 池田会員>

河川を通じた放射性元素流出はどの程度問題でしょうか。

< 回 答: 長尾会員>(6月7日)

当面は、陸域からの主なソース(注:放出源のこと)は福島原発なので、ご検討されているモデルで問題はないと思います。ただし、今後、少なくとも3年程度の評価を行う場合には、河川からの寄与を無視することは出来ません。モデル上、現状では陸水の影響は福島原発に比べると小さいので、緊急のモデルとしては充分ですが、今後の評価まで考えるのであれば、モデルの拡張をしやすくするのであれば、現在のモデルに河川の寄与を含めることができればすばらしいと思います。もちろん、手間がかかり、煩雑になることは理解しておりますが。一応、情報としてお伝えします。

アプローチ案

流量の大きな阿武隈川と太平洋側の小さな河川の2グループに分類し、河川の寄与を考える。その場合、阿武隈川には国土交通省の水位・流量観測点があります。流量に関しては、河川流路の断面積を確定しないことには流量換算できません。そのため、国土交通省はデータの提示はいやがることが予想されます。水位の速報値はホームページで閲覧可能ですので、過去の水位と流量との関係式を作成し、こちらの責任で流量の概算値を見積もることは可能です。

太平洋の小河川に関しては、福島県の管轄ですので、データは福島県が持っています。いずれにしても、河川水の放射能のデータがないと意味がありませんが、環境省では福島県と連携し、河川調査を開始したようです。また、我々も個人ベースですが、福島県の河川、阿武隈川、宇多川、新田川で観測を開始しました。そのため、陸域からのソースを入れることが可能になると思います。

< 追加質問: 池田会員 >

地下水が流入しているにもかかわらず、流出がないというのは、非科学的としか言えません。流入だけが起きているとしたら、水位は上昇し続けますが、そんなことはありません。もしあるところで平衡状態になったとしたら、そこで流入と流出が同時に起きるでしょう。また雨水などで水位が十分上がれば、流出するはずです。

< 回 答: 長尾会員 >(7月10日)

近傍での水収支は、汚染水の動きを考える場合には、非常に重要になると思います。ただし、一部の記述には地下水位の増加が懸念されるということですので、地下水の流入量は大量のものではなく、濃度が高いために問題となっていることも考えられます。また、沢の様な状況ということですので、周囲から沢に向かって透水層が配置され、水が流れ込む状況であれば、流入だけでたまる一方ということはありえると思います。

いずれにしても、より詳細な事実確認が必要だと感じます。できれば、当日の資料等があると検討することは可能だと思いますまた、地下水流道は1次元で考えるのではなく、少なくとも、2次元で、水平方向の流れを考えの流動特性を考えるべきだと思います。

4.海底堆積物への蓄積

< 質 問: 池田会員 >

海底堆積物にどのくらいの放射性元素がたまるでしょうか。

< 回 答: 北里会員 >(4月12日)

放出された放射能物質は,プランクトンに取り込まれるか,粘土粒子に付着し,それが凝集して海底に沈降する。春から夏にかけてネフェロイド層(注:浮遊粒子が混じっている水の層:高濁度層)を形成するだろう。それは,ときに海底近底層数十 mの厚さにもなります。福島~茨城沖で形成された放射能を含んだネフェロイド層の粒子たちは,おそらく2つの経路で広がることが予想できる。一つ目は,頻発する余震に伴って発生しているだろう混濁流とともに大陸斜面に広がり,最終的には海溝に堆積する。もう一つは,200~300 mの水深を南に流れる親潮潜流(注:水深数百m付近を海岸に沿って南下する亜寒帯系の水の流れ)に乗って南下し,最終的には相模湾の中層に達する。

底層に沿った拡散のモニタリングとしては,海底表層未撹乱堆積物の定期的な採集が必要。今から始め,数年に渡って定点観測(注:観測地点を固定して定期的に観測すること) を行うことが大切であると考えている。場所は,たとえば相模湾三崎沖水深300 m,福島,宮城沖水深1000 m,2000 m,4000 m,6000 m などが候補になる。なお,私ども(注:海洋研究開発機構)の緊急調査では海底表層堆積物を採集することも計画に含んでいる。

もう一つは,福島~茨城沖に沈降粒子を捕捉するセジメントトラップ(注:海中を沈降してくる粒子を捕捉する装置のこと)を係留することだが,それができるかは判断が必要である。

いずれにしても,原水爆実験の折に放出されたセシウムのピークがいまだに,堆積層上部にみられることを考えると,放射性物質 が,水中の物理,化学,生物だけをみることは片手落ちであると思う。

< 質 問: 池田会員>(7月中旬)

海水中の放射性元素は海水と共に流れていくので、渦拡散などによって8月には、1 Bq/Lから0.1 Bq/L程度に低下するでしょう。一方で、陸圏から河川や地下水を通じて流入する元素は、風応力が海面に働いて作られる海底エクマン層によって表層から海底近くに運ばれる分、植物プランクトンに吸着して沈降する分、動物プランクトンや海洋生物に取り込まれてデトリタスとなる分が、徐々に陸棚海底に蓄積するでしょう。海水から海底土壌に移行する量を把握する必要があります。さらに底棲動物に移行する量も知りたいところです。

< 回 答: 角皆静男会員>

定量的議論なら大歓迎です。私には、アルカリ金属のセシウムがそう簡単に堆積するとは考えられません。いったん海底に達しても(メカニズムはいろいろ)、回帰する部分が大きいでしょう。

海洋におけるセシウムの平均滞留時間は百万年の桁です。いったん粒子(有機物など)に付いても、だんだん海水に戻るでしょう。ただ、土壌中のセシウムが高温で焼き物状態の大粒子になっていれば、簡単には溶けないかもしれません。

アルカリ金属及びアルカリ土類金属の大きい順に並べた海水中元素のlog(海水中濃度/地殻中濃度)、すなわち濃度比の対数をとり、それに10を加えた値は、ナトリウム:9.7、マグネシウム:8.9、ストロンチウム:8.4、カリウム:8.2、カルシウム:8.2、リチウム:7.9、ルビジウム:7.1、セシウム:6.8。要するにセシウムは地殻中で海水中の1000倍程度の濃度になる。

< 回 答: 鈴木靖会員>

厚労省第3回水道水における放射性物質対策検討会

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001fhol.html
ここにある資料1 中間とりまとめ資料の52-54ページあたりに浄水処理での放射性セシウムの挙動について触れられています.

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001fhol-att/2r9852000001fhth.pdf
水田の調査によると,放射性セシウムの濃度は

水田表面水 7.4-15.8 Bq/L

水田土壌  3000-3700 Bq/kg(水を含んだ状態)

だそうです.1ケースだけの測定ですが,海水と海底土壌でも同じような状況になっているのではないでしょうか.

< 回 答: 乙坂重嘉会員>

角皆さんのご指摘のとおり、セシウムは海底に堆積しにくい元素です。一方で、セシウムのイオンと鉱物の結晶の空隙との大きさの関係から、セシウムが結晶の層間に挟まりやすいことがわかっています。海水に粒子(イライトなどの鉱物)を懸濁させた接触実験では、海水から鉱物へセシウムを取り込む速度が、粒子の濃度に概ね比例するという結果が得られています(Nyffeler et al., Geochim. Cosmochim, Acta 48, 1513, 1984他)。下記の日下部さんのご意見にあるセラフィールドでの計算 (Kobayashi et al., J. Nucl. Sci. Technol. 44, 238, 2007) も、この考え方に基づいています。

沿岸域、特に津波直後は、懸濁粒子の濃度が極めて高いと思われ、この場合、セシウムが「粒子化」する確率は増え、沿岸の堆積物中にはセシウムが堆積します。一般に、海水中の懸濁物濃度は、陸からの距離とともに急激に減少するので、沖合いでのセシウムの堆積量はかなり減ると思いますが、沿岸の堆積物が再輸送されれば、沖合いの堆積物から放射性セシウムが見つかることもおかしくないと考えます。

沿岸域では、ある程度は海底に残ることを前提に調査をしたほうがよいと思っています。

< 回 答: 日下部正志会員>

セシウムがアルカリ金属(注:元素を性質にしたがって並べた周期表で、最も左側に位置する第1族のうち,水素を除いた元素のこと)に属しているからといって、海洋では他のアルカリ金属と似たような挙動とるかといえば、そうとも言い切れないと思います。

まずresidence time(注:滞留時間)について。下にBroecker and Pengからのデータを抜粋します。単位は百万年。カリウムは1200万年、セシウムは33万年。百万年はありません。セシウムだけが有意に短いことが分かります。

Residence time(単位:百万年)Li 2.8、Na 55、 K 12、Rb 3、Cs 0.33

セシウムは海底の粘土鉱物に吸着することは良く知られています。例えば、沿岸の堆積物の年代測定にセシウム137の分布パターンが使われてます。得られた年代は鉛210による年代測定の見積もりとも決して矛盾しません。仮にセシウムは堆積物にいったん落ちても簡単に再度溶け出すのであれば、セシウム137の分布は年代測定に使うことはできません。この分野の論文はたくさんあります。また、沿岸域では、堆積速度とセシウム137のinventory(注:存在量)の相関もかなり良いです(海生研のデータ)。その他、実際に堆積物への取り込み、または堆積物との結合状態に関する論文も出ております。手元にある論文では、堆積物中のセシウムは大きく分けてreversible phase(注:可逆相,逆に戻ることができる段階のこと),slowly reversible phase(注:緩可逆相,逆に戻ることができるが時間がかかる段階のこと)、irreversible phase(注:非可逆相,戻らない段階のこと)の3つがあり、最初はゆるく粘土鉱物に結合していて(reversible phase)、時間が経つにつれ堆積物への結合が強まり、最終的には不可逆的に堆積物に取り込まれるとしています(Borretzen, P., and B. Salbu, J. Environ. Radioact., 61 (2002), 1-20)。さらに、日本近海の海水中のセシウム137 とストロンチウム90の比は大体一定(1.4)ですが、深層水中では明らかにその比は小さく(0.2)、逆に堆積物中ではその比は5に上昇します。沿岸域ではストロンチウム90に比べセシウム137がはるかに堆積物へ移行しやすいことを示してます(稲富・他, 放射線科学,52(3), 34-38(2009))。

セシウムはいったん外洋の清浄な海水中に移動すると、保存性成分として挙動しますが、沿岸ではその限りでないというのが私のセシウムのイメージです。セシウムのグローバルの分布のシミュレーションは移流拡散で大体説明できますが(論文多数)、例えば、イギリスのセラフィールド(Sellafield)から出たセシウムのシミュレーションでは、粒子の寄与を考慮しなければうまく実態と会わないという報告もあったような気がします(どの論文だったか今手元にない)。

今後福島から出たセシウムの移動プロセスをシミュレートする場合には、是非scavenging(注:海水に溶けていたものが粒子に吸着し、それが沈降することにより海水から除かれるプロセス)を考慮したモデルを作っていただきたいものです。大部分は溶存として物理的に移動拡散希釈のプロセスを経るとしても、出た量が膨大ですから、わずかが沿岸の堆積物に蓄積するなら、生態系への影響、特に水産物への影響は非常に大きいことが考えられます。irreversible phase にあるのなら、底棲動物(注:海底付近で生息する動物)には影響しないはずですが、結構それまでには時間がかかるでしょうし、沈殿の形態は様々なものが考えられますから、しっかり堆積物へのフラックスはつかんでおきたいものです。Cs-rich(注:セシウムが豊富な)粘土鉱物が底棲動物の体内に入ったらどうなるかも興味あるところです。

< 追加質問: 池田会員>

角皆会員の回答を解釈すると、オーダーでは、セシウムは重量あたりで海水の1000倍程度まで濃くなると考えてよいのでしょうか。その厚さはどのくらいですか。それとも厚さは考慮する必要はないのでしょうか。それらを考えた上で、底棲生物への移行は海底土壌の0.1くらいと見積もっていいですか。

< 回 答: 森田貴己さん(水産庁研究管理官)>

海底土から海産物への移行については、もっと調べれば論文があると思いますが、私の手許にある論文は、J. Radiat. Res., 19, 93-99 (1978)ぐらいです。この中では、海底土からのセシウム137の移行割合(海産物中の濃度/海底土中の濃度)は、ゴカイ(汽水性:注:汽水とは海水と淡水が混じった水のこと)0.179、海藻(紅藻類)0.069、二枚貝0.045 と示されています。また、私自身が以前深海性ナマコ中のセシウム137を測定したことがありますが、ナマコの体の中の泥のセシウム137濃度は、ナマコを採集した地点の海底土中のセシウム137濃度とほぼ同じであり、ナマコ被のう中のセシウム137は、体中や周辺の海底土中の濃度の約0.04 でした。陸上の土壌中ではセシウム137はかなり強く粘土に吸着するらしいので、海底土中でも同様に強く吸着しているのか、海産物への移行はこのぐらいです。ただ、今回は非常に高濃度のセシウム137 が海底土から検出されていますし、十分に吸着する前に海産物に取り込まれる可能性も否定できないので、底魚の調査は、かなり重視しています。

5.海産物への影響

< 質 問: 池田会員 >

いろいろな魚類がいるので、放射能汚染を受けやすいもの、受けにくいものを教えてください。

< 回 答: 片山知史さん(東北大学) >(7月12日)

東北の沿岸魚類専門として、コメントさせていただきますが、定量的な話は全くできないので、パターン化して認識しましょう、という程度です。代謝(注:生体内で起こるエネルギーを取り出すための化学反応のこと)・濃縮については不勉強で判らないのですが、生活パターンから整理しました。

魚類が汚染される原則

1.生息している海水が高濃度に汚染されていること。しかもその場に長時間生息していること。

2.餌が高濃度に汚染されていること。しかも摂食量が多く、代謝し同化した量が多いこと。

(4月?のコウナゴは、両方だったと考えられる)

A: 浮魚・回遊魚:北上中のマイワシやサバ類(スルメイカも?)の分布域は、希釈されている外海で、しかも数週間で通過するので、汚染の可能性は低い。これから南下するサンマも。マグロ・カツオ類は、より外海なので汚染の可能性は低い。秋から南下するサケは、沿岸に接岸するものの、滞在期間は数週間であり、餌をほとんど食べないので汚染の可能性は低い。

B: 浮魚・沿岸定着性:上記コウナゴと同様、汚染の可能性が高い。

C: 底魚・回遊魚:マダラ、スケソウダラは秋から南下し、特にマダラは沿岸に近寄る。牡鹿半島以北は、汚染の可能性が低いものの、仙台湾に入った個体は注意。ただし、仙台湾のものも産卵まではあまり餌を食べないので、汚染の可能性は中程度。しかし、産卵後の春季は摂食量が著しく多いので、汚染の可能性は高い。しかも、その後北上する個体も多いので、北向きへの拡大が懸念される。

D: 底魚・沿岸定着性:ヒラメやスズキなどは比較的水柱の生産を利用するので汚染の可能性は中程度。しかし生活領域や食物を海底に依存しているカレイ類(マガレイ、ヤナギムシガレイ、ミギガレイ、アカガレイなど)マアナゴ、キアンコウ、エゾイソアイナメ、タコ類(ヤナギダコ、ミズダコなど)は、汚染の可能性が高い。エビ類、カニ類も。

E: 極沿岸の砂潜二枚貝:ホッキガイ、アカガイ、コタマガイ、チョウセンハマグリなどは、底生珪藻や懸濁物を摂食しているので、極めて汚染の可能性が高い。

F: 養殖対象種:マガキ、ホタテガイ、マボヤ、ワカメ、コンブ、ノリは、牡鹿半島以北が中心なので、当面は心配ないが、海流の変化(汚染物質の拡大)によっては、注意を要する。特に海藻類は、多く蓄積されるであろう。

G: 河川および河口域の生物:陸域からの放射性物質が集積している状況。中流域のアユは一段落したが、下流域・河口域のヤマトシジミ、アサリについては、汚染の可能性は中程度。ただし、河川間の差が大きい。

上記は当面の推察です。有害金属や残留性有機汚染物質の例から察すると、多少外海でも長期的な蓄積も考えられると思います。

6.放射性元素の測定法

< 質 問: 池田会員>(7月下旬)

放射性元素の測定法に簡略な方法(緊急測定)と高精度を得られる方法があると聞きましたが、何が違うのですか。

< 回 答: 植松会員>

放射線にはアルファ、ベータ、ガンマ線の3種類があります。そのうちで波長によって元素を特定できるガンマ線の測定について説明します。

ガンマ線測定装置でよく使われているものには2種類あります。丸い缶詰状で、測定できる面は缶の上面(同軸型と呼びます)だけです。もう一つはその缶の真ん中に試験管が差し込める穴(井戸型)があります。穴の壁面でも測定できます。

同軸型の検出器の上に点状の試料を置くと、そこから出て来る放射線の下の半球部分が計測できます。しかし、井戸型では穴の底に試料を入れるとほぼ全球状に放出される放射線を計測できます。その試験管は数ミリリットル程度の容量しかありません。

緊急測定の場合、同軸型で、缶詰を全部覆うような凹型の容器を逆さにして、2 Lの海水を入れて、濃度に応じて時間を調整し計測する方法です。もし、濃度が低ければ、計測時間をもっと長くすれば測定可能ですが、バックグラウンド(試料がない場合)レベルに依存し、バックグラウンドが高くなっている東日本では、測定時間が長ければ計測できるものでもありません。現在の政府放射能対策支援本部の緊急測定方法では海水の放射能濃度の検出限界値は、ヨウ素131が約4 Bq/L、セシウム134が約6 Bq/L、セシウム137が約9 Bq/Lです。これらを下回る場合は、不検出と記載されています。

今回の緊急時測定は2 Lではなく、500 mlの海水を容器に入れて同軸型検出器の上に置いて測定するようになり、ますます検出限界が上がったということです。同じ検出効率だとしても、1/4のカウント数しか得る事ができません(実際には少し効率がいいようです)。例えば、カウント数が100カウントであった場合、その計数誤差は、ルート100、100+/-10、25カウントになればルート25となります。すなわち2 Lの時と比べ誤差は2倍になります。実際には、バックグラウンドがあるので、もっと誤差が増えます。

< 追加質問: 池田会員>

高精度で測定するには海水の量を増やすのですか。それとも前処理をするのですか。

< 回 答: 植松会員>

必須なのは前処理です。さらに海水の量を増やせば測定時間を短縮することができます。海水中のセシウムを選択的に吸着するAMPという試薬を入れて、その沈殿を回収して、その粉末を井戸型測定用試験管に詰めて、計測するという方法です。最近の検出器の計測効率が改善され、2 Lの海水中のセシウム量があれば、低バックグラウンドの状態の検出器では十分測定可能ということです。一試料について24時間計測ということもよくあります。場合によれば、一週間測定ということも聞きます。20 Lの海水から濃縮すると、計測時間が短縮できます。

必須なのは測定試料の体積を減らすための前処理です。さらに前処理をする海水の量を増やせば測定時間を短縮することができます。海水中のセシウムを選択的に吸着するAMPという試薬を入れて、その沈殿を回収して、その粉末を井戸型測定用試験管に詰めて、計測するという方法です。最近の検出器の計測効率が改善され、2 Lの海水中のセシウム量があれば、低バックグラウンドの状態の検出器では表層海水であれば事故前のセシウム137のレベル(1-2mBq/L程度)は十分測定可能ということです。一試料について24時間計測ということもよくあります。場合によれば、一週間測定ということも聞きます。20 Lの海水から濃縮すると、計測時間が短縮できます。