この度、日本海洋学会会長に就任いたしました東京大学大気海洋研究所の植松光夫です。1941年1月28日に創立され、70年を越える歴史ある本学会の中で、私は一会員として育てられ、そして16人目の会長として、須賀利雄副会長はじめ、会員のみなさんとともに、海洋学の進歩と普及を図る機会に恵まれました。どうかよろしくお願いいたします。
わが国は海洋立国を標榜し、2008年には海洋基本法が閣議決定され、海洋環境の保全から海洋資源の開発まで、広い範囲の取組みが進められています。地球温暖化に対する海洋の果たす役割、東日本大震災の津波による沿岸生態系の影響評価、そして放射能による海洋汚染、海洋資源開発に伴う環境保全などを機に、日本海洋学会の多くの会員が、今までの学術社会という枠組みから、研究者としての責任、また一般社会、産業社会への貢献ということを、もっと身近に感じて取組み始めたのではないでしょうか。
そんな中で、わが国の少子化の影響もあり、学生をはじめ若手研究者の会員数が減少しつつあります。これは個々の大学や教育研究機関だけの問題ではなく、本学会が真摯に取り組むべき課題でもあります。また、海洋研究は海という国境のないフィールドであり、国際的な連携のもと、海洋全体を対象として取組まなければなりません。本学会はわが国だけではなく、アジアや世界の海洋学の進歩にも貢献する必要があり、国際交流を活発にし、国際的な視野を持つ若手会員の育成に努める必要があります。
海洋学はまだ未知の問題にあふれる学問としての面白さを会員自らが楽しむとともに、外へも発信したいものです。また、総合科学のひとつでもあり、海の上の大気科学、海の下の海洋底科学、開発を押し進める海洋工学、さらには海洋政策などのコミュニティから学び、そして連携を強め、シナジー効果を発揮できればと願う次第です。近年の学会活動を振り返ると、2000人を越える会員数が1800人と減少傾向にあります。本学会に関連する分野の研究者が、会員として加わっていただければ、海洋学がさらに統合的に活性化されるものと信じています。
現在、日本海洋学会は財政の健全化を喫緊に図る必要に迫られています。しかし、みなさんが本学会会員として学会発表や論文発表、その他の活動を通して、会員でよかったと満足していただけるよう、幹事会や評議員会のみなさんとともに努める所存です。海洋学会会員、みんなで「楽しい元気な海洋学会」にしましょう。
平成25年4月