調査船での海洋観測では,必ずと言っていいほどCTD観測を行います。
※CTD = Conductivity Temperature Depth profiler(電気伝導度,温度,水深を観測する装置)
CTD観測では,水温や塩分の鉛直構造を,ケーブルが届き,かつ測器が水圧に耐えうる限りの深海まで(水深6500m以上),精密に観測する事ができます。
1番目の写真は,静岡県御前崎の沖を南に300kmほど下がった観測点でCTD観測を開始するところです。白く塗装されているのは,CTDを海中に投入するためのクレーンの部分です。黒く見える天板から下が観測器の本体です。
2番目の写真では船上のPC画面上で,CTDを水深2000mまで下ろす間に測定した水温,塩分,密度,溶存酸素濃度をリアルタイムでモニターしています。
CTDには多くの場合,採水器を搭載して,いろいろな水深から海水を採集して分析します(1番目の写真,枠にぐるりと取り付けられたグレーの筒がニスキン採水器)。例えばアンモニウムやリン酸塩などの栄養塩濃度,クロロフィル濃度,さらには細菌や微小生物の密度や種類,微量元素など,水深1000mだろうが,3000mだろうが,水を取って来て分析して,実測値を得ることができます。
3番目の写真では,甲板に取り込んだCTDの採水器から,分析用の海水を採取しています。4番目の写真は,採取した海水中の溶存酸素濃度を分析しているところです。
船上での時間の多くは,分析用の海水を採水し,処理する作業に費やされます。
CTDで観測した水温や塩分のデータは研究に使われるだけでなく,気象庁に通報することで,気象予報の精度を上げるためのデータとしても使われています。
様々な機関の海洋観測データを集めて,海洋物理モデルにのせることで,東北海区水温図のような広範囲にわたる精細な水温分布を推定する試みも行われています。
(撮影/文 独立行政法人水産総合研究センター M.T.)