ケイ藻は海洋植物プランクトンの代表格で,世界中に多くの種が存在しています。植物ですから,太陽エネルギーを利用して海水中の二酸化炭素を固定して有機物に変換します(光合成による一次生産)。これが他の生物の餌(エネルギー源)になるので,ケイ藻は海の生態系を支える植物とでも呼ぶべき重要な位置にあります。
最近は地球温暖化との関連でも注目されています。たくさん増えたケイ藻が海底に沈めば,海洋表層の二酸化炭素を除去したことになるからです。海洋で大量のケイ藻を発生させれば,より効率的に大気中の二酸化炭素を海洋深層へ除去できるのではないかと考える科学者もいます。
写真はケイ藻の一種Chaetoceros pseudocurvisetus Manginを顕微鏡で拡大撮影したものです。上段は群体で,茶色の中身が詰まった一区画が一つの細胞で,ケイ酸(≒ガラス質)の殻で保護されています。細胞の幅はおよそ0.02〜0.03mmです。細胞から伸びている毛のようなものも,極めて細いですがケイ酸です(中段)。
本種は環境条件が悪化すると厚いケイ酸の殻を作って閉じこもり,増殖を停止して休眠します。これを休眠胞子といいますが(下段),条件が良くなるとすばやく増殖をはじめることから,種の生き残りに重要な役割を担っていると考えられています。ケイ藻にはこのような生き残り戦略を持つ種がたくさんいます。
ケイ藻の生態には不明な点が多く,培養実験などを行って,一つ一つ特性を明らかにする地道な研究が続けられています。
(撮影/文 O.O.)