声明前文

学会員の多くの皆様は,空前の被害をもたらしている東日本大震災から日本が立ち直るため,科学,とくに海洋学に携わる者ができることは何か,という問いを考え続けているのではないでしょうか.2011年4月14日,この問いをテーマとし,海洋学会員有志を中心とした「震災にともなう海洋汚染に関する相談会」が,東京大学理学部1号館で開催されました.相談会では,原発事故に続く海洋汚染の観測やシミュレーション予測結果などについて報告がなされ,今後もこうした活動や情報の発信が必要という認識で,100名に及ぶ参加者の同意が得られました.翌15日に開催された学会幹事会でもこのような認識は支持され,「震災対応ワーキンググループ」が設置されることとなりました.このワーキンググループは今後,学会内の各研究会とも協力しながら,震災対応の調査研究と社会に向けた情報発信に関わっていくことになります.このたび,その決意を学会全体で共有し,また広く社会に伝えるため,学会長声明の発表も行うこととなりました.ここにその全文を掲載します.今回の震災に関しては,日本学術会議や地球惑星科学連合などが声明や提言などの形で対応に取り組む姿勢を表明しています.ここに示す声明が,こうした関連組織や社会とのいっそうの連携につながり,今後の復旧と復興に向けた活動に資することを願うものです.

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東日本大震災と原発事故に関する日本海洋学会の活動について

日本海洋学会

2011-2012年度会長 花輪 公雄

2011年3月11日,マグニチュード9.0の「東北地方太平洋沖地震」により発生した巨大津波は,東日本の太平洋岸を襲い,多くの人命を奪うとともに,住居など多くの建物を破壊し,生活基盤と生産基盤を一挙に奪い去りました。日本海洋学会は,亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈りするとともに,被災地の一日も早い復興を願ってやみません。

今回の大震災では,地震の揺れと津波の襲来により福島第一原子力発電所が制御不能の事態となり,大量の放射性物質が大気と海洋に放出されたことが分かってきました。その量は,国際原子力事象評価尺度の最高レベルである「レベル7」と認定されるように,過去最悪の規模に達する恐れがあります。現在,放射性物質の大気や海洋への流出と拡散に関する観測と監視,そして数値モデルによる予測は,政府機関を中心として行われ公表されていますが,現状把握においても予測においても今後の一層の改善と継続的な取り組みが望まれます。

さらに,震災による人的,物的被害とともに,水産業の基盤をなす沿岸生態系の破壊や,干潟や砂浜域の流出,そして大型藻類や底生生物の流出などが同時に起こっていると想像されますが,その実態は全くと言ってよいほど分かっておりません。

日本海洋学会は,海洋科学の振興を目的として1941年に設立された学術団体です。本学会は上記の認識に立ち,学会の総力を結集し,海洋環境の現状把握と将来予測に関して,情報の収集とその発信,そして提言や調査研究計画の組織化を通じて,震災対応に取り組む社会への貢献を目指すことをここに宣言いたします。同時に,専門外の会員および非会員の皆様にもなるべく分かりやすく,かつ,なるべく多くの情報を発信することを心がける所存です。

今回,本学会は,学会長を含む幹事会構成メンバー全員と各分野の専門家による「震災対応ワーキンググループ」を設置しました。今後はこのワーキンググループを核として迅速な対応をすることとしております。会員の皆様におかれましても,海洋学会を見守っていただいている非会員の皆様におかれましても,ご支援とご協力のほどお願い申し上げます。

(平成23年4月18日)