これまでの知見と本シンポジウムで発表された観測結果に基づいて、放射性セシウム蓄積量の推定を試みました。コンビーナーが中心となり、乙坂重嘉氏にも同等かそれ以上に参加していただいて、まとめを作成しました。シンポジウム発表者と特にコメントを出して下さった参加者の皆様に点検していただき、本サイトに掲示します。
推定を複数示すポイントは、基本的な前提が共通なら、植物プランクトン量などの見積もりがある程度異なっていても、蓄積量の多寡は同じになることを示すためです。また推定をするにあたり、3人で深く議論した点を示して、それらが妥当であるか否かご意見をいただくこととしました。最後に観測された特徴から堆積物への蓄積プロセスに関して読み取れることを列挙しました。これについても皆様のアイデアを歓迎いたします。
コンビーナー:池田元美、神田穣太
問題設定
以下のいずれのプロセスによって、震災直後(2011年秋まで)東日本沿岸に注目すると、セシウム137がどのくらい堆積物に蓄積したのか、またその他のプロセスを考える必要があるか
(1)植物プランクトンに吸収または吸着の後、沈降・堆積した
(2)植物プランクトンを食べた動物プランクトンの糞などデトリタス性の懸濁粒子に移行するか、あるいは粒子に直接吸着し、沈降・堆積した
(3)震災に伴って流入、あるいは海底から再懸濁した海水中の土砂や堆積物に吸着し、沈降・堆積した
(4)高濃度汚染水が風成流や風による混合によって海底まで送られ、堆積物に直接吸着した
(5)河川あるいは陸面で土砂に吸着し、河川水とともに海洋に流れ込んで堆積した
現時点での所見
観測された南北200km程度に拡がる高濃度の蓄積を説明するには、次の状態のいずれかが必要である。
○通常考えられるより一桁高い植物プランクトンの生長(生産)があった
○震災に伴い沿岸から流れ込むか、海底から再懸濁した鉱物粒子が非常に高い濃度で存在し、それと同じ深度に高濃度放射性セシウムが存在
○海底土直上に高濃度放射性セシウムを含む海水が到達し、堆積物内部で速やかに放射性セシウムを含む海水が移動・拡散するか、堆積物が攪拌されてセシウムを下方に運ぶ
○大きな河川の河口周辺においては、陸上で吸着した放射性セシウムが土砂と共に流入し、高い濃度に蓄積している
これらの根拠については、以下をご覧ください。
シンポジウム・プログラム
堆積物の放射性核種濃度を求める 推定:その1
堆積物の放射性核種濃度を求める 推定:その2
堆積物の放射性核種濃度を求める 推定:その3
推定に際し深く議論した点
観測結果から見たプロセス選別